JA 全国相続相談・資産支援チーム 顧問 弁護士 草薙 一郎
Question
事業用定期借地契約の当事者である貸主(個人)からの相談です。
事業用定期者借地契約については、20 年の期間が満了し、借主との間で再契約をすることにしていました。借主は法人です。
当事者双方に信頼関係があることから、借主からの要請で期間10 年の普通借地契約を締結しました。その後、貸主が死亡し、現在の個人が相続して貸主となっています。
そこで、事業用定期借地契約を普通借地として再契約をしたことについて、消費者契約法で何らかの対応をして、普通借地契約自体を無効とできないでしょうか。
Answer
1.質問では、本件の貸主が消費者契約法の「消費者」であることを前提とした質問をされています。
しかし、本件の貸主は事業用定期借地権契約の貸主ですので、同法の事業者に該当することから、本件は消費者契約法の対象とはなりません。
2.消費者契約法では、個人が事業として又は事業のための契約の当事者となるときは、同法の事業者に該当するとしています。そして、事業とは、一定の目的をもってなされる同種の行為の反復継続的遂行であり、営利目的か否かは問わないとしています。また、同種の行為を反復継続する考えであれば、行為を開始した時点でも事業のための行為と考えられています。
3.本件は、先代、先々代と土地の貸主として事業用定期借地契約の貸主であったことから、相続した方も事業者と認定されてしまうものと思います。
税法では、アパートなどのとき何軒に貸しているかなどで事業物件か否かの判定がありますが、税法の考えが消費者契約法の事業者か否かの判定基準となるわけではありません。
4.質問では、事業用定期借地契約を借主からの申し出で普通借地契約に変更してしまったとのことです。これを無効とするには、普通借地と定期借地のちがいを正しく認識していなかったので、錯誤があるので取消す(当時は無効)と
の主張となりますが、錯誤を立証するのはとても大変です。
なお、再契約で期間を10 年間とする普通借地契約をされていますが、普通借地契約は更新の契約ではないので、期間は一律で30 年間となってしまいます。