235.古家を利用した分散型ホテルによる街おこし ~愛媛県大洲市~

JAまちづくり資産管理情報 顧問 一級建築士・不動産鑑定士 中城 康彦

目次

1.はじめに

画一的になりがちなホテルより風情のある旅館を好む風潮も強まっています。他方、伝統的な旅館の経営は容易ではありません。さらに、地方都市では中心部が空洞化し、空き家問題も深刻化しています。新規に旅館を建設して経営する環境にはありません。

散在する古家を活用した「分散型ホテル」により、低未利用建物の有効活用、環境客の入込みと地域の活性化を図る動きがあります。国際的な認証団体が選ぶ「世界の持続可能な観光地」で世界1位となった愛媛県大洲市もその例です。

JAとホテルとは直接的な関係はありませんが、衰退傾向にある地方都市の活性化に貢献することが求められていますし、農家組合員が所有する低未利用の建物の有効活用につながる可能性があります。大洲市で分散型ホテルの運営にかかわるNIPPONIAは、事業成立のキーワードとして「中間支援者」の重要性を指摘し、大洲市では地域活性化に尽力する地元の人々による「エリアマネジメント組織」が協働しています。このいずれもJAに期待される役割と重なりがあります。

2.城下町大洲の古家活用による地域活性化

城下町であった大洲には相応の良質な木造建築のストックがあり、NHKの朝のテレビドラマのロケが行われたこともありました。そのよう良質な木造建築の集積に目を付けてホテルを運営しているのがNIPPONIAです。1軒をホテルのフロント機能と若干の客室にする(写真1)ほか、客室は1棟1室を原則(写真2、写真3)として、街中に散在しています。朝食会場と夕食会場はそれぞれ別の建物が利用されており、大きな建物が夕食会場となっています(写真4)。ホテルにはそれとわかる共通の暖簾が掲げられています。

3.中間支援者の必要性

全国で街おこしをおこなっているNIPPONIAとその関係組織は、ケースごとに異なる課題に対応する方法を工夫しています。図1~図4はその一例です。共通するのは中間支援者としてまちづくり開発会社を位置付けることです。中間支援者は所有者と事業者や利用者を繋ぐ役割を果たし、所有者や事業者単独では事業化が困難な事案を事業化に結び付けています(図5)。需要が必ずしも多くない地域、事業資金の工面が難しい局面などで、その解決方法を編み出す仕組みです。

4.おわりに

ホテルだけでは街おこしはできません。また、観光資源がなければホテルも成立しません。大洲では図6のように、様々な用途に古建築を再生資料して、街の魅力を作り出しています。海外から旅行者には日本人以上に感動があると思われます。古建築を再生利用している点や地域の人々がエリアマネジメントに参画していることもあって、「世界の持続可能な観光地」第1位になっています。

街おこしの資源とは思われないもが資源になる可能性、有形でないために気づかない人々の意思や力の重要性など、大洲の街おこしにはいろいろのヒントが含まれています。

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