(株)ときそう 不動産鑑定士 吉野 荘平
今回は「物件調査」の生活関連施設の調査のうち、排水施設について解説を致します。
1.排水施設の種類
排水施設は、その施設が「(生活)雑排水を処理するかどうか」で大きく2種類に分けることができます。雑排水とは、トイレから排出される汚水と区別した言い方で、台所や洗面所、風呂場からの排水を指します。
雑排水も処理する排水施設で代表的なものが公共下水道で、他に合併処理浄化槽も汚水、雑排水の両方を処理します。反対に、雑排水は施設で処理せず側溝に流すか敷地内に浸透して処理する方法があり、単独浄化槽や汲み取り便所などがあげられます。
単独浄化槽は、平成13年4月1日から製造、販売が禁止されましたが、環境省の2025年調査によると、現在も単独浄化槽を使用している世帯は3割以上あるようです。既存の単独浄化槽はみなし浄化槽として使用し続けることができますが、次に再設置するときは合併処理浄化槽に変える必要があることに注意しておきましょう。

2.下水道処理区域の調査
公共下水道事業が未着手の市町村を除き下水道担当部署では、現地の排水施設の状況にかかわらず、必ず処理区域かどうかを確認しておく必要があります。その理由はいくつかありますが、どの状況にも共通するものとして「受益者負担金」を取り上げることができます。
受益者負担金とは、新たに公共下水道を利用できることとなった者から工事費用の一部を負担してもらうという制度で、多くの市町村が採用しています。この受益者負担金の徴収にあたり、自治体は都市計画法75条又は地方自治法第224条を根拠に徴収していることが多いようです。この場合、地方自治法224条を根拠にしている自治体では受益者分担金などの呼び方をしているところもあります。受益者負担金の具体的な徴収方法や負担額については下水道法に定めはなく各自治体の条例で定められるため、下水道担当部署の窓口で金額等を確認しておく必要があります。
以下、下水道処理区域内外に分けて解説します。

3.下水道処理区域内の場合
公共下水道処理区域内であっても、必ずしも下水道を利用しているとは限りません。以下では公共下水道を利用している場合と、それ以外に分けて解説します。
(1)公共下水道を利用している場合
①所有者等への聞取り
所有者や利用者に聞かないと分からない情報があるため、少なくとも次の点は所有者等に確認してみることが重要です。
1)公共下水を使用しているか(下水道料金を支払った領収書を見せてもらう)、使用している場合は公設管か私設管か。
2)他人の土地を利用して配管されていないか(反対に他人の管が取引物件の敷地内を通過していないか)。
3)建物がある場合、過去に排水不良があったかどうか。過去に浄化槽を使用していた場合は撤去済みかどうか。
②下水道担当部署での確認
下水道担当部署では先に述べた受益者負担金のほかに、図面の閲覧(可能であれば写しの入手)とその内容を確認しておきましょう。
市町村が管理する下水道管の埋設状況は、下水道台帳という図面に記載されています(図3)。公共下水道管理者は、その管理する公共下水道の台帳(公共下水道台帳)を調製し、これを保管しなければならず、誰でも閲覧することができる定めとなっています(下水道法23条)。

そこで図面を閲覧、入手したら必ず凡例を参照し、少なくとも次の内容は確認しておきましょう。
1)埋設管が私設管でないかどうか
2)汚水桝の位置・個数
3)口径はどのくらいか
③現地確認
現地確認をする理由は、主に次の点があげられます。
1)図面の記載が実際と異なっている場合がある
2)他の施設(浄化槽など)が使用又は残っている場合がある
3)道路と敷地とに高低差があり、接続費用が高額になる場合がある
(2)浄化槽・汲み取り式を使用している場合
建物がある場合、処理区域内であっても公共下水道以外の排水施設(浄化槽など)を使用しているケースもよくあります。
下水道法では、公共下水道が使用できる区域では遅滞なく排水設備を設置しなければならず(下水道法10条)、また、くみ取り便所が設けられている建築物を所有する者は3年以内に水洗便所に改造し、汚水管を公共下水道に連結させなければならない、とされています(下水道法11条の3)。
処理区域内で公共下水を使用していない場合、行政の対応や指導は各市町村で異なりますが、排水施設は建築確認における確認項目の1つでなので、少なくとも建て替える際は公共下水道にしなければならないことを重説で説明する必要があります(建築基準法31条)。
4.下水道処理区域外の場合
処理区域外で将来も下水の整備予定がない場合、現地の排水施設の設置状況に応じて次の点に注意して下さい。
(1)浄化槽の場合
浄化槽に関する紛争として多いトラブルは、主に①浄化槽が故障しているケース(主に建物がある場合)と、②放流先の管理者等から拒否されるケース(主に更地の場合)です。
①建物がある場合
浄化槽に関するトラブルとしては、中古住宅の引き渡し後に故障して使えないケースが多くみられます。その原因の多くは、空家のまま長期間放置されていたため、管の詰まりなどで浄化槽が故障しているというものです。
浄化槽に関する法律として、浄化槽の設置、保守点検、清掃及び製造についての規制を定めた浄化槽法(昭和58年法律第43号)がある。浄化槽を使用している場合は、少なくとも毎年1回の法定検査(法11条)や保守点検、清掃(法10条)が義務付けられています。さらに自治体によっては1年に行う点検回数を条例で増やしているところもあります。この点検が正しく行われているか、調査にあたり確認しておきましょう。
なお、単独浄化槽については浄化槽法の改正により平成13年4月1日から製造・販売が禁止され新たに設置することができません。既設の単独処理浄化槽については「みなし浄化槽」に位置付けられ廃止するまでは使用することができますが、建て替えにあたって合併処理浄化槽への再設置が必要になることを説明すべきでしょう。
②更地の場合
更地の場合は建築にあたり、放流先水域の管理者や水利権者、付近住民の代表などの同意が得られず、浄化槽が設置できないトラブルが依然としてみられます。依然として屎尿を処理した排水を流すことに対し流域住民の感情的な抵抗がみられるため、放流先から同意が得られるかどうかは確認しておきましょう。
(2)汲み取り式の場合
汲み取り式の場合で多いクレームは、害虫や悪臭がみられる。これらは紛争まで発展するケースは少ないようですが、取引物件だけでなく近隣家屋が原因によることも多いので注意が必要です。所有者や利用者へ確認するだけでなく、感覚には個人差があるため内覧した際に相手方自身にも注意して確認してもらうことが必要です。