ONEWord 一言 太郎
人口減少・危機管理・多文化共生。今、JAが担うべき「新たな架け橋」としての役割とは。
未曾有の人口減少、止まらない物価高騰、そして気候変動。かつて私たちが「当たり前」だと思っていた社会基盤が揺らぎ始めている今、都市における「農」の価値が劇的に再評価されている。
それは単なる「食料生産」という産業的な側面に留まらない。高齢化社会におけるセーフティネット、子育て世代の居場所やコミュニティ、そして外国人との多文化共生の現場として、「農」は都市が抱える課題を解決する「鍵」になりつつあるのだ。
今回のインタビューでは、「まちを変える都市型農園―コミュニティを育む空き地活用」の著者であり、30 代で国の社会資本整備審議会計画部会及び交通政策審議会交通体系分科会計画部会の臨時委員に任命されている東京大学空間情報科学研究センター准教授の新保奈穂美先生を迎え、これからの日本社会における「農」のポテンシャルと課題、そしてJA や農家への「次代の役割への期待」について、じっくりと語っていただいた。
序章:なぜ今、都市に「農」が必要なのか
ーーまず単刀直入にお伺いします。今の日本の現状、そして将来を見据えたとき、都市における「農」ーーあえて「農業」という産業に限定せず、「農」という営みには、どのような役割やポテンシャルがあるとお考えでしょうか。
新保先生:改めて言うまでもありませんが、日本は今、未曾有の人口減少と物価高騰の真っ只中にあります。その中で、まず都市部、つまり街中で「生産する」ということの意義は、これまでになく高まっていると言えます。
一つは、物理的な「食料危機」への備えです。コロナ禍を経て、私たちは世界的な物流が機能しなくなるリスクを肌で感じました。災害や世界情勢などによって、ある日突然、「お金さえ出せばどこからか食料が入ってくる」という状況が成立しなくなることが起こり得るということだと思います。何かあった時に、自分たちである程度自給できたり、地域で食を回せたりする力、いわゆる「レジリエンス(回復力・強靭性)」を高めるという意味で、都市に農地や生産の場があることの必要性が高まっていると考えます。
ーー防災や食料安全保障の観点ですね。
新保先生:はい。そして、それ以上に私が重要だと考えているのが、「つながりの創出」という社会的意義です。
今、高齢化が急速に進んでおり、少し前には「老後資金に2,000 万円必要だ」と言われていましたが、その金額もどんどん上がっています。金銭的な対応も厳しくなるなか、何かあった時にお互い助け合える「日常のコミュニティ」の準備も必要です。公助の限界が見え隠れする中で、自助・共助が成り立つ場を作らなければならない。
そのための最強のツールが「農」なんです。
ーーなぜ「農」が最強のツールになり得るのでしょうか?
新保先生:「農」には、多様な人々をつなぐ力があるからです。誰でも彼でも農作業が好きだとは言いませんが、作物を育て、収穫し、一緒に料理して食べるという営みは、世代や属性を超えて共通の楽しみになりやすい。
一緒に体を動かして汗をかけば心身の健康も維持されますし、会話も生まれます。結果として、社会保障費や医療費の抑制にもつながるでしょう。計算できる数字には表れにくいですが、この「見えない価値」が、様々な社会システムを補完する役割を果たすと考えています。

